この世の構造

人間がこの惑星上で今後も生存できるかどうかを決める決定的な問い

次男の大学入学式の帰り、コミュニティスペース「恕庵」で開催された「地域通貨でーら祭り」に参加。


日本円1000円を1000でーら(阿蘇のカルデラに因んで)に換金して、有機野菜等と引き換えて愉しむ。

トランジッションジャパンの吉田俊郎さん、かつてパーマカルチャーネットワーク九州で活動を共にした山口次郎さん、フリーライターの澤田佳子さん、「恕庵」世話人の二見孝一さんらとしばし歓談。いつか、でーら祭り@小国郷やりませう♬

TAO塾の必読書の一つ「モモ」の著者ミヒャエル・エンデは優れた児童文学の作家であるとともに、「モモ」の中に「時間泥棒」や「時間貯蓄銀行」という寓意を盛り込み、「お金とは何か?時間とは何か?」について深く突き詰めて考えた偉大な思想家でもあった。

エンデは1995年に65歳で亡くなったが、奥さんが日本人だったこともあり、死の前年NHKに現代のお金をテーマにした番組を作るように提案。死後、「エンデの遺言〜根源からお金を問う」という番組が放送され、後日同名の本も出版され大きな反響を生んだ。

小国町に東京大学の丸山真人先生や廣田裕之さん、日本総研の嵯峨生馬さんらに来て頂き導入を検討。シルビオ・ゲゼル研究会の森野栄一さんの洞察の深さには眼から鱗だった。かのアインシュタインも「私はシルビオ・ゲゼルの光り輝く文体に熱中した。貯め込むことができない貨幣の創出は、別の基本形態をもった所有制度に私たちを導くであろう」 と言う言葉を残している。

数年後、私の同級生で町の福祉施設で働く椋野正信君が興味を持ってくれ、小国町の地域通貨「ゆう」を立ち上げることができた。湯布院の浦田龍次さん、環境経済学の坂田裕輔さんらは地域通貨を通じて出会い、その後交流が続いている心ある同志だ。

30年以上、東洋医学の哲学である「陰陽論」を研究している私は、ベルギー中央銀行で国家電子決済システムの総裁などを歴任後、ヨーロッパ統合通貨ユーロの設計と実施の責任者を務め、その後、カリフォルニア大学バークレー校持続可能な資源開発センターの研究員をしたベルナルド・リエター氏に興味を持った。

彼は、著書『マネー崩壊~新しいコミュニティ通貨の誕生』(日本経済評論社)の中で、「お金に対する考え方を刷新しなくてはならない。また、現実になりつつある豊かな技術の可能性をさらに追求していかなければならない」と述べ、これからあるべき経済モデルを東洋思想である「陰陽」の概念を用いて提示した。

一昨年、残念ながら亡くなったリエター氏だが、彼は、ドルやユーロや日本円など一般通貨を「陽」、地域通貨を「陰」と表現した。

中央の銀行が発行する「陽」の一般通貨は「中央集権的・統制的・不足・競争推進・持続不可」で、それが地域経済の自立を妨げて、コミュニティ崩壊へと導く側面があると指摘。

一方、「陰」の地域通貨は「オープン・民主的・効率性重視・持続可能」で、「住民の協力、相互信用、共生」の上で成り立つので、「陽」のマイナス面を補完して地域経済の活力になると主張!

しかし、現実は当時、雨後の筍のように、全国で次々と立ち上がった地域通貨はどこも衰退の衰退の一途をたどっている・・・・

グローバル化とドルの一極支配が強まる中で、ますます「極陽」化している世界において、女性的な「陰」のエネルギーを活性化し、社会にバランスを回復する手段として、「もうひとつのお金」「もうひとつの経済」を深く考え、今自分にできることを考え、さらなる一歩を実践していきたいと思った一日となった。

「資本としてのお金は最大の利益を生むように投資される。そうして資本は増え、成長する。先進国の資本は増え続け、そして世界の5分の4はますます貧しくなっていく。というのもこの成長は無からくるのではなく、どこかがその犠牲になっているからだ。そこで私が考えるのは、もう一度貨幣を実際になされた仕事や物の実態に対応する価値として位置づけるべきだということ。そのためには現在の貨幣システムの何が問題で何を変えなければならないかを皆が真剣に考えなければならない。人間がこの惑星上で今後も生存できるかどうかを決める決定的な問いだと私は思っている。」(ミヒャエル・エンデ)

世界が注目する資本主義のオルタナティブ「社会的連帯経済」(廣田裕之)

●地域通貨はなぜ失敗してきたか?(枝廣淳子)

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●エンデの遺言