人生論

貴方が今興味関心があるものほど尊いものはない

私が小学4年生の時に、クラスに勉強ができずに、先生から叱られたり、同級生にバカにされたりする友達がいた。確かに彼はのろまで、不器用で、要領の悪いところがあった。

でも、ちゃんと丁寧に導いてやれば理解する力を持っていることを私は密かに知っていた。彼を罵倒する先生や同級生に彼はバカなんかじゃないと伝えくなった。

時間はかかるけれど、理解の階段を、一歩一歩、楽しみを持って小さな達成感を積み重ねていけば皆と同じところまできっと辿り着ける。

ある時、彼のコーチになって算数の問題に取り組んだことがあった。間違えてもヘッチャラだよと伝え、何度も繰り返しやって、出来た時には大いに褒めた。楽しく、面白がる工夫をすると、彼自身の「快」のエネルギーが彼を引っ張っていった。

ついには、授業中、皆んなから拍手が上がるほどの成果を発揮した彼は一躍クラスのヒーローになった。満面笑顔の彼にガッツポーズを送り喜びを共有した。

中学になると私の関心はスポーツの方に向き始め、大学まで体育会系の道を歩むことになったが、教育の持つ力、得に選手の持つ可能性を引き出すコーチングには強い関心を持った。

そして、大学3年の時、母校小国中で教育実習をした。職員室で教師達を前に緊張して挨拶をし終わると、私が中学時代にお世話になっていた先生が教頭になっていて校長室に呼ばれ、こう言われた。

「波多野君、遠慮するな。ここはお前の卒業した中学校だぞ。好きなようにやったらいい」

今から思うに、私のあまりの緊張ぶりに少しでもリラックスさせようとした先生の思いやり発言だったと思うが、私は先生の言葉を真に受けて、2週間の教育実習に、教室にギターを持参して社会科用語の替え歌を歌ったり、伝統の卓球部の後輩たちを熱血指導したり、当時興味のあった「仮説実験授業」というユニークな教育法に挑戦したりと実習生としてはありえないクリエイティブな愉しい日々を過ごさせてもらった。

しかし、近い将来、教壇に立つ姿や部活のコーチをする自分の姿はイメージできるものの、生徒達をモノ扱いする職員室の雰囲気の中にいる自分はイメージできなかった。また「実社会」を知らずに知識だけを切り売りする社会科教師の説得力の無さに問題を感じ、別の道を歩くことに。

大学を卒業後、私が働いたのはその後我が人生の師匠となる堀田俊夫さんが営む「学育塾」と言うちょっと変わった塾だった。堀田先生は、常日頃から人間に「教育」なんてできないという「教育観」を持っていた。子どもを「教え育てる」という観点ではなく、子供は「学び育つ」ものだという考え。

子供は誰しも、楽しく学び育ちたがっているという強い信念があった。「貴方が今興味関心のあることほど尊いものはない」と語り、子供達が関心を持っていることを興味深く聴いてあげる姿勢の大人がありさえすれば子供の好奇心、向学心が勝手に育っていくと常々言っておられた。

 堀田さんは、例えば小学生の男の子が、車に興味を持っていたら、その話を興味深く耳を傾ける。学校の成績にシャカリキになっている保護者や学校の先生がよく口にする「そんなことより、漢字や計算の一つでもやっていなさい」なんてことは言わずに!

車のカタログを興味深く見ている生徒に芽生えた興味関心に寄り添い、知的好奇心を自然に引き出す。共感してくれる大人に出会えた事でその生徒はより一層、車について自学自習を進めて行った。

堀田さんは、「穴を深く掘ろうとすれば自然に幅が必要になってくる」と見極めていた。

最初はベンツの車のカタログから始まった興味関心も、掘り進めるうちにエンジンの構造やドイツ語、ドイツ人の国民性ということころまで広がっていくことだってあると教えてくれた。

私の場合もまさにそうだった。手塚治虫の漫画「ブッタ」を読んで感動したことを堀田さんに話し聞いてもらった事がきっかけで、仏教、禅、そして東洋哲学にどんどんと興味が出てきた。中高大と体育会系であった私はあまり読書をする方ではなかったが、堀田さんのお陰でいつしか月に10冊以上の本を読むようになった。

私は、学校で出される読書感想文の宿題が一番嫌だった。興味もない本を読まされて、感想書かされても、ちっとも面白くない。いつもズルしてクラスの真面目な生徒達に頼んでコピーさせてもらっていた。彼らが今、寺子屋TAO塾の書棚に並ぶ数千冊の本を見たらきっと驚くに違いない。

堀田さんは、仮に、「何も興味あるものなんてない」という子供がいても、それを丸ごと受け入れて、その子供の「ワクワク」が芽生える日を信じてひたすら「待つ」。教育はつめこむとか、つくるとか、育てるとかでなく、育つもの。育つためには、「待つ」ことが必要だと、「待つ」ことで、その子供の中から生まれ出た本物の力が芽吹いてくるという考えだった。

堀田さんから学んだことは私の人生の根っこであり、TAO塾の「教えない教育・治さない医療・救わない宗教」「己こそ己のよるべ・あなたこそあなたの主治医」のコンセプトに引き継がれている。

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