人間関係は自分関係
昨日、3月31日は母の82歳の誕生日。
母の妹になる私の叔母が作ってくれたお赤飯を、毎年、従兄弟が持ってきてくれる。
母と叔母は日々、手紙を添えたプレゼントを交換し合う。従兄弟同士の私たちがときにトランスポーターを務める。
年老いても兄弟姉妹がとても仲がいいのはメッチャ素敵なことだと思う。深謝!
大分に住む母の兄である伯父に会うのも、母はすこぶる喜ぶ。
杉の皮を剥いて稼いだお金で高校に通った伯父。
学力優秀にも拘らず妹の進学を優先し、中卒で准看護学校に進んだ母。
私に丈夫な身体を授けてくれた母
自転車乗りを教えてくれた伯父
に深く深く感謝!
我が誇るべき母と伯父♬ よか兄妹♬
記念にツーショット写真をパチリ!
昨夜は、春休みで帰省している次男と、3人でささやかな誕生パーティをする。
次男が最近始めたギターを披露。下手なギターとサザン桑田佳祐のモノマネのうまさのギャップに私も母も大爆笑。
77歳の喜寿の時、長男、次男、母と4人で行った東京旅行のことを思い出す。
粗食で育った母のお陰で、私はどこの国のどんな食べ物を食べてもビクともしない丈夫な腸能力を持つ身体を授かった。
母の記憶力の良さは天下一品。
「今日は○○さんの誕生日。○○をあげてきて!今日は○○さんの旦那さんの命日。○○をあげてきて!」と病床の時でさえも贈り物を出し続ける。新聞をくまなく読み、知り合いの記事を見つけたら、すぐに電話をかけ、ハガキを送る。
祝祭日には必ず国旗を飾り、日々仏壇と神棚にお供えをし合掌、七草粥、節分豆まき、中秋の名月のお団子、冬至のゆず湯等々年中行事を忘れることはない。看護師という職業柄もあってか、清潔好きで掃除、換気を日々絶やさない。
早朝から庭の草取り作業を始めている母を見ていると、日本一働き者の母には、私はまだまだ遠く及ばないと感じてしまう。
盆迎え 家ととのえし 傘寿の背
今や様々な絵画展で賞を取る画伯となった学生時代からの親友の岩田隆君が、数年前に我が家にステイに来た時に、母の肖像画を書いてくれた。彼が東京芸大の学生時代一緒に暮らし、2週間に渡り北は北大から南は信州大まで様々な大学を訪ねて交流する青春の冒険旅を共にした仲の彼に、母の絵を書いてもらうのがとても嬉しかった。
母の絵といえば、尊敬する鈴木靖将先生や大野勝彦先生に描いて頂いたこともあった。
鈴木先生には、万葉風に60歳以上若く美人に描いていただき(笑)、大野先生からは「ミヨ子母さんがいてくれたお陰 毅」というメッセージを書き添えて頂いた。
一昨年、母は「熊本県歯科医師会長賞」という賞を頂いた。「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という8020運動。81歳の母は今も30本の歯全て1本も虫歯なし。母の「貧乏育ちの砂糖知らず」の”歯無しにならない話”にハハハと笑う。
いやはや、清貧なる明眸皓歯にゃ歯が立たぬ♬ 我が家の歴史上もっとも誇らしい賞だ!
役場職員として町立病院の事務をしていた父と看護婦の母は職場結婚。社交家で息子の私から見てももモテる父だったが、結婚は母しかいないと決めていたと生前、話を聞いていた。
父の葬式に作家の小林正観さんが来てくれた時に、父の遺影を見るなり「お父さんは好きなことを一生やりきった人でしたね」という言葉をかけられたことがあった。まさにその通りの人生・・・しかし、今では、その全てを陰で支えていたが母だったのだなぁとつくづく思う。
以前、ある雑誌のインタビューで「波多野さんの尊敬する人は誰ですか?」と問われたときに私は迷わず両親と答えた。男気があり、社交的で、包容力とユーモアに満ちた父をずっと誇りに思っていたが、精霊勤勉・質素倹約・窈窕淑女の母あっての父であったことは間違いない。父と母・・・まさに「陰陽」調和の妙味の至り!
●精霊勤勉:力の限りを尽くして学業や仕事に励むこと
●質素倹約:飾り気がなく、つましく暮らすこと
●窈窕淑女:品格・徳行・奥ゆかしさを備えた、しとやか且つ艶やかさのある女性
小国の公立病院に母を連れて行くと、沢山の人達が挨拶にくる。元職場というのもあるが、父母が仲人をした人達が沢山いて、しばし歓談となるのである。
母と毎月18日に開催される「観音縁日」に時々一緒に行く。母と同じく貧農の家に生まれながら、努力して熊本市で不動産業を起業し、高度成長期の建設ラッシュの中でビジネス界で成功した永江一郎さんが建立した観音様。彼から無償の奨学金を頂いたことに感謝する。
永江さんが晩年故郷・小国町に戻られてから、永江家の法事で講演させて頂いたり、事業の行き詰まりがあったときに、「観音様」のような助けがあったことなど色々不思議な話を伺った。
昨年、母とのちょっとした諍いが続き、心苦しく感じていた時、ふとしたきっかけで初めて親子で心理カードセッションをした。
様々な所で、様々な人達とやっている、想いを「話す」ことでありのままの自分に向き合い受け止め固定観念を「放す•離す」ゲーム形式のワークなのだが•••まさか、母とやることになるとは•••灯台下暗し、まず隗より始めよ•••
私が大学時代に母校小国中学校で教育実習をした頃は、学校の教師への道に進んでくれるものと信じていた母にとっては、イヴァン•イリイチの思想ほか様々な影響により「脱学校化」「脱病院化」の方へ進んだ私の歩みは「裏切り」「期待外れ」の連続に感じたに違いない。
敗戦後の貧しさと高度経済成長のど真ん中をただひたすらに懸命に生きてきた母親とは職業観、医療観、教育観、、そして人生観の違いが極めて大きいのも詮方ない。
お互いの価値観の違いを棚上げして、そのまま、ありのままを受け止める、ささやかな時間の共有
母親とやるのは正直、戸惑いがあったが、「死」を意識すると変わる~肚がすわる。そしてエデュテイメントの手法は柔らかい導入に誘う。
これまで沢山の教育相談、健康相談に関わって来て強く思うことは、母親の愛情は時に「救い」にも、時に「呪い」にもなるということ。様々な問題の根っこに親との関係性の歪みが隠されている。
お互いに起きた具体的な出来事で感じた身体感覚を一つずつ共有していくことが紛争解決平和構築学的にもマインドフルネス的にも大事な大事なステップと実感。
「私たちはみんな、あるプロセスの犠牲者であると同時に、他のプロセスにおける加害者になりうるのである」(アーノルド・ミンデル)
「終活」「看取り」•••「反省」「努力」するのではなく、気にかかることを一つずつ、ほぐして、ほどいていくこと•••
母の「終活」の手伝いでアルバム整理をしていていたら、なんとも田舎の風情を感じる写真を発見!父と母の結婚式の時に、祖母が文金高島田を着込んだ母を引き連れて近所に挨拶参りをしている写真。土の道、藁葺き屋根の家、なんともスローな時間の流れを感じる。この翌年昭和37年私が生まれることになる!
しかし、このほのぼのとした写真から数年経つと、母も色々辛い思いもしたようだ・・・
3世代同居の中で祖母との「嫁と姑」問題・・・
私も子供ながら、小学校の頃、私の大好きだった祖母と母のギクシャクした関係がとても辛かった。
しかし、最近、ポツリと、「当時は相手に問題があると思って嫌っていたけれど、私の中にあるトラワレが原因だったように感じる」と話すようになってきた。もちろん、喧嘩はお互い様、双方に問題があったのだろう。しかし、母が人間関係は実は自分関係と見つめ直してきたのにはびっくり!
これまた、「言うは易し、行うは難し」の世界。私もなかなか自分自身のあり方を見つめるなおすができない。80歳を過ぎてそんな自己変容を続ける母はすごいと思う。
高原ふさ子さんの「看取り」活動を紹介したアエラの記事はこちら
以前、怪我をして病院に入院した時、母の足をマッサージしてあげた。母には、私の結婚で再び「嫁と姑」の苦労をかけ、そしてシングルファーザーになり子どもたちの面倒までみてもらった。
母の足を触っていると、これまでの人生の長き歩みを感じられて、なんとも感慨深い気持ちになった。母の足は小さいけれど、美しい。
歌手で俳優の武田鉄矢さんの母親は南小国町出身。
私が小学校にときに彼の「母に捧げるバラード」が流行ったが、先日、ネットで彼の言葉が目に入った。
「君たちは名前を持っています。これはお父さんとお母さんが未来に託した希望です。世界で一番短い美しい歌です。」
ちなみに、武田鉄矢さんも出演した映画「男はつらいよ 第21作」の舞台も小国郷が舞台。
父の妹である私の叔母は、見た目も性格も亡くなった祖母にそっくり。
愛情に恵まれた家庭に育ち、意識は社会へ向き、「恩返し」よりも「恩送り」ばかりの人生を歩ませてもらった私・・・
なんの親孝行もできてない私だが、また母と叔母を連れて杖立温泉・黒川温泉・わいた温泉郷・満願寺温泉・・・小国町と南小国町合わせた小国郷に8ケ所以上もある素晴らしい温泉地を訪ねよう。そして「男はつらいよ」の舞台になった田の原温泉・大朗館のお風呂にも連れて行こう。
1999年9月9日の重陽の節句に父が旅立ちは母にとって大きな大きな悲しみだった。私の従兄弟達が集う年に一度の「いとこ会」に今年は、母と叔母を招待。母に父と一緒にカラオケを楽しんだ時を思い出してもらうべく、大好きな千賀かほるの「真夜中のギター」(吉岡治作詞・河村利夫作曲)を皆の前で歌っては?と声かけてみた。引っ込み思案の母が意外にも「そうね!歌う!」と即答して内心びっくり。母の変容に負けてはいけない。たとえ、どんな辛い苦しみ、悲しみがあっても諦めてはいけない。
- 粗食が育てた腸能力
- 母親の愛情は癒しにも呪いにもなる
- 私たちは犠牲者でもあり加害者でもある
- 人間関係は自分関係
- 名前は世界で短い美しい歌
- どんな苦しみ悲しみにも諦めてはいけない
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