TAO的パラドックス思考

TAO塾20周年〜52回目の誕生日〜ソローを想う

5月14日、私の52回目の誕生日でした。TAO塾20周年記念の講演会の日に、沢山のお祝いメッセージなども頂きありがとうございました。これからも、20年前の初心にかえり、これからも、教育・健康・環境の分野で、ささやかな「ハチドリのひとしずく」を続けていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。今から、21年前、31歳の誕生日に敬愛するヘンリー・デビット・ソローのゆかりの地を訪ねたあの日の感動を忘れずに生きて行きたいと思います!

「ソローの食卓を訪ねて」   波多野毅

「これからの話の大半は、マサチューセッツ州コンコードの森にあるウォールデン湖のほとりで、ぼくが自分で作った家に住んでいたときに書いたのもだ」の冒頭で始まるH・D・ソロー著『ウォールデン─森の生活』。
1845年~1847年の2年間、ソローはウォールデン湖畔で自然と共に生き、質素な生活をしていた。

私は、1993年、4月10日より久司道夫先生の自宅兼事務所であるクシハウスにホームステイしていたが、5月14日、当時のソローの食事内容の調査をかねて、彼の故郷コンコードを訪ねた。クシハウスの最寄駅・ブルックラインヒルズ駅よりグリーン・D・ラインでノースステーションへ行き、コミューターレイルに乗り換えて45分でコンコードに着く。

コンコードの駅を降りると、目の前が「ソロー・ストリート」まずは、ソローに関する様々な資料が展示されているソロー会館へ向かう。案内係に「ソローの食卓」状況について尋ねる目的を話すと、「実は私は18歳のとき、んボストンの教会でミチオ&アヴェリーヌ・クシの講演を聴き、それがきっかけでマクロビオティックを実践して病気を治したのです」とのこと。驚いたことにソロー会館の案内係がマクロビアンだったのである。

そんなこんなで話がはずみ、資料を色々と紹介してくれた。食事に関する直接の資料はないとのことだったが、いくつかの関係資料と彼の推察を元に食事内容と割合をまとめてみると、予想通り、ウォールデンの2年間は、実にマクロビオティックに近い食生活をしていたようである。

主食はライ麦やトウモロコシ粉にイーストをいれないで焼いたパンのほか、「インドの哲学を熱愛した私が米を主食にするのはふさわしいことだった」とお米を食べた。その他、糖蜜やキイチゴ、スグリ、ブドウ、野生のリンゴなど、森に自生している果物、自家製の野菜などを食した。ウォールデン湖の魚は時に食べたが、肉は食べず、乳製品も口にしなかった。また、飲み物は水で、紅茶や珈琲は一切飲まなかった。しかも、これらの穀物や野菜などは自分の畑で作り、家畜は使わず、自分の手だけで耕し、そこで収穫したものだけを食していたのだ。

ソロー会館を見た後、旧牧師館、エマーソンの家、コンコード美術館、オーチャードハウス、ウエストサイド邸と、ソローゆかりの地を散策する。そして彼が眠るスリーピー・ホロー共同墓地を墓参したのだが、その簡素な墓石に生前の彼の質素な生き方が偲ばれた。

最後はウォールデン湖。マクロビオティックの創始者・桜沢如一も1965年ボストン滞在中にウォールデン湖を訪れ、手を合わせて頭を下げて敬礼し、「有難う、ソロー、有難う」と尊敬の念を込めて言ったという。

彼の住んだ小屋跡で、小鳥のさえずりや風の音に耳をすませ、森のやわらかい香りの中で、自然との感動の日々に生きた彼の生活を夢想し、こもれ陽の中、しばし瞑想、深く深く自然の中に溶け入っていくようだ。

ソローの実践した超絶主義は多くの小説を生み出し、20世紀の多くの人々に読まれ続けている。ガンジーやアーサーキング牧師もまた、ソローから大きな影響を受けたという。トルストイは彼を思想界の雄として讃えている。

奴隷制度に反対であったソローは、奴隷制度を支持する政府のために税金をおさめることを拒否し、督促状が何度こようともこの態度を貫徹し、警察に捕らえられたこともあった。彼の反骨精神にみちた「市民の不服従」の一説にはこうある。

「真理のより純粋な源について知らない人々、真理の流れをさらに高くまでたどることのできない人々は、賢明にも聖書と憲法に拠り、そこからはなれることなく畏敬と謙遜の念を抱いて真理の水を飲む。しかし真理の水がこちらの湖、あちらの池にわずかに流れ込むのがわかる人々は、気をひきしめて再び水源へと巡礼の旅を続ける」(Civil Disobedience 市民の不服従より)

ソローは、自由・健康・幸福への道を示し、一元の楽しい楽しい世界にはいるためには自然と一体になり、我欲・言葉・思惟を超えなくてはならないことを教えてくれている。

心洗われるウォールデンへのデイトリップから意気揚々とクシハウスに帰宅する。ところが、着くなり、クシハウスの仲間達から色々と仕事を押し付けられる。
「こちとら、一日歩き疲れて、ヘトヘトなのに・・・」

挙げ句の果てには、40~50kgはあろうかと思われる重い荷物を2階から1階のダイニングルームへと運ばされた。しかも部屋の中はいつになく真っ暗!
「真っ暗で何も見えないよう〜」と思うやいなや、パッと明かりがつき「ハッピーバースデイ!タケシ!」の声、声、声!!!

なんとソローゆかりのウィールデンの地を訊ねた5月14日は私の31歳の誕生日ではないか。しかもハウスの仲間達が私の誕生日をおぼえてくれていたのである。アメリカらしいサプライズのお祝い!ハウスに帰宅するなり、沢山の雑用を押し付ける手の凝りよう・・・「う〜、やられた〜」

しかしながら、最高の祝福を頂いた忘れられない日となったのは間違いない。

「ありがとう!ソロー、ありがとう!」

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