スロー

イソガシイに逃げない生き方

日本人の二大逃げ口上は、「仕事」と「忙しい」。何かあっても「仕事なので、ごめんなさい」「忙しいから、出来ません」と返答されれば、言葉の接ぎ穂を失ってしまう。

ビジネスの語源はbusyというくらいだから、会社で出世するには忙しくなくちゃダメなようだ。食事もゆっくり食べてはおれない。

ファーストフードをよく噛まず、飲み込むように済ますことが出世の秘訣。競争社会は時間との戦い!食事の時間も携帯電話を手放さない。言葉も早口、呼吸も浅く……。行き着く先は、英語にもなった「KAROSHI(過労死)」……。

かつて大阪の正食協会で、雑誌鼎談させてもらったウィンドファームの中村隆市さんが、現代社会を「準備社会」だと語った。

我々は将来のための準備に忙しい。小学校ではいい中学校のために、高校ではいい大学に入るために入学試験の準備をする。大学は良い就職のためで、良い職場は良い老後のため……。

私達はいつまで自分のしたい人生を先送りするのだろう。20年前、詩人の坂村真民さんのご自宅を訪ねた時、「念ずれば花開く」という書を書かれていた。仏教では「念」に生きることを大切にしている。過ぎ去った過去を悔んだり、まだ来ぬ将来を憂うことなく、「今、ここ」を念を入れて生きる。

1999年9月9日の重用の節句に亡くなった私の父の葬式に来てくれた作家の小林正観さんは、「念という漢字は、今の心と書く、過去や未来に「念」が残っている状態のことを「残念」という」と笑った。

今に思えば私は、ラッキーだったのかもしれない。それは、毎日、とてつもなくハードな日々を過ごしながらも、決して「忙しさ」に逃げず、「忙しい」と口走らない人達に出会ってきたからだ。

我が人生の師匠・堀田俊夫先生は言った。「人生を道楽と思っている人は忙しいとは言わない」

KJ法の師匠・川喜田二郎先生は言った。「私は忙しいとは思わない。極めて充実はしているけれど」

作家の神渡良平さん、国連の北谷勝秀さん、ナマケモノ倶楽部の辻信一さん、阿蘇デザインセンターの若井康彦さん、そしてパーマカルチャリストのデジャーデンゆかりさん、彼らもまた決して「忙しい」とは言わない人達だった。

自分のしたいことをしている子どもは、「忙しい」なんて言葉は使わない。

一方、自分のしたくないことをさせられている大人は、よく「忙しい」という言葉を使う。

私が出会ってきた彼らは、永遠の子供だったのだ!

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