「病室の 真白き中に ひびきける 音なき音の 点滴のつぶ」
今から 34年前、祖母を看病する中、作った短歌だ。1987 年 8 月 29 日、私は愛する祖母を癌で亡くした。中・高・大と体育会系で健康そのものだった私は、それまで健康や病気のことなど深く考えることもなかった。
「まぁ、もし病気になっても薬を飲めばいい。お医者さんに治してもらったらいい」と何の疑いもなく安易にそう思っていた。しかし、祖母の死そしてその後、父も癌になったことで、ものの本を読むようになった。
情報とは面白いもので、こちらの問題意識の深さ加減で入ってくるものが違ってくる。それまで、マスコミなどで「現代医学、難病を克服!」なんていうものばかりが目についていたのが、「三分間医療」「薬漬け医療」「国民医療費の増大」などの問題があり、緊急医療における症状、感染、外傷を抑える治療などに絶大な効果を発揮した一方、慢性病に対してはなかなか大きな有効性が見いだせない状態にあるなどを知った。
また、大学時代に学んだ社会学的アプローチを加え、医療社会学的に捉えると、権威主義的な医者と患者の関係、医療学閥による硬直化、専門家支配による依存性の拡大、原子力ムラに似た医療ムラの既得権益問題など現代医療が様々な問題を抱えていることを段々と知ることになる。
さらに、アリゾナ大学医学部のアンドルー•ワイル博士などホリスティック医学を推進する医者たちとの出会いの中で、根本的な問題として西洋医学の思想的基盤になっている科学の要素還元主義が人間をあたかも部品の集まりのように観てしまう機械論的な医療につながっているというパラダイムの問題も見えてきた。
西洋では、自我の確立が大切だとされ、合理的精神で自然を観察し、支配しようとしてきた。しかし、いまや世界的な環境破壊と核の恐怖などの歪みが噴出し、これまでの進み方に反省が出てきている。いまこそ、有機的でエコロジカルな世界観が必要なのだ。
現代文明は、科学技術の発達と共に、物質的豊かさを提供した一方、過食・美食・運動不足・ ストレスの増大をもたらした。詩人ゲーテに「人間は、自然から遠ざかれば遠ざかる程、 病気に近づく」という言葉があるが、人間は、自然との共存の中でしか生きられないし、 自己の内なる自然の声が、すっと聴こえる「自然体」の自分でなければ、心身のバランスコントロールができないのだ。
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