TAO的パラドックス思考

農林業と教育〜その多様性と持続可能性

今から10年前、「森のくまさん」という熊本のブランド米が、日本穀物検定協会が発表する2012年産の「食味ランキング」で最多得点を獲得し1位になり、地元熊本は大いに盛り上がった。

「森のくまさん」は、コシヒカリ父とヒノヒカリ母から品種改良された美味しいお米!

毎年発表される「水稲の品種別作付動向」(米穀機構)によると、令和2(2020)年度の統計では、作付面積トップ10は以下の通り。

1位コシヒカリ 2 位ひとめぼれ 3 位ヒノヒカリ 4 位あきたこまち 5位ななつぼし 6位はえぬき  7位まっしぐら 8 位キヌヒカリ 9位きぬむすめ 10位ゆめぴりか

トップ10は1位のコシヒカリ以下全てコシヒカリの品種改良種。今や日本全体の米の、実に約 8 割がコシヒカリおよびコシヒカリ系統というコシヒカリ一族支配の様相。

特に「ひとめぼれ」「ヒノヒカリ」「あきたこまち」はコシヒカリの F1 品種で、この直系品種だけでも作付割合の約 6 割を占めると言われる。

かつては、「コシヒカリ」と共に「ササニシキ」が米の両横綱として君臨していたが、今や店頭からほとんど姿を消した銘柄となった。

美味しい米はとても魅力的だが、あまりにも偏った単一系作物の独占状態は、平成5年のときにあった「大凶作」のようなものが今後また起こる可能性を考えれば食の安全保障上の問題を感じざるを得ない。

放射線や化学薬品などを使って、人工的に突然変異を起こして創りだされたミルキークィーンや、日本モンサントの「とねのめぐみ」、三井化学の「みつひかり」、住友化学の「つくばSD」など化学企業が美味や多収を謳う米が注目されているが、これもまたその光と共に影も見ていくべきだろう。

また、食養的観点から考察すれば、コシヒカリは、米にモチモチ感を出すために餅米と掛け合わせて作られたものであることを忘れてはいけない。餅はウルチよりも栄養価が高く、でんぷんがアミロペクチンという粘っこいタイプで、さらさらしたアミロースがほとんどない。本来、餅米は正月などお祝いの日に食べるもので、常食に適したものではない。〈ハレ〉の食であって〈ケ〉の食ではないのだ。

農林業も教育も、長期的スパーンで、単一性と多様性の長所と短所を見定めていく視点が大事な気がする。

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